そのままの気持ちで、一歩ずつ 〜ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)って?〜

子どもたちの支援をしていると、「イライラする」「どうせ無理」といったネガティブな言葉に出会うことがあります。
そんなとき、私たちはつい「そんなこと言っちゃダメ」と言いたくなるものです。
けれど、無理に消そうとすればするほど、気持ちはかえって強くなることもあります。
私たちの支援に役立っている考え方のひとつが
「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT:アクト)」という心理療法です。
ACTでは、「嫌な気持ちや考えを無理に消すのではなく、それを受け入れながら、自分にとって大切な方向に進むこと」を大事にしています。
ACTには、6つの柱(プロセス)があります。
①「アクセプタンス(受け入れ)」
つらい感情や不安を無理に消そうとせず、「今ここにあるもの」としてやさしく受け入れます。
②「脱フュージョン」
これは、自分の中に浮かんだ考えを「ただの思考」として捉える力です。
例えば、「どうせうまくいかない」という声が浮かんできても、それに飲み込まれずに「そう思ってるんだな」と一歩引いて見られるようになります。
③「今この瞬間に気づく」
気付くこともACTでは大切にしています。
過去の後悔や未来の不安にとらわれず、今の感覚や出来事に目を向ける練習をします。
④「自己としての文脈」
少し難しい名前のプロセスでは、自分の思考や感情を観察する“もうひとりの自分”の視点を育てていきます。
⑤「価値の明確化」
これは、自分が本当に大切にしたいことは何かを探す時間です。
⑥「コミットメント(行動への取り組み)」
大切にしたい価値に向かって、小さな一歩を踏み出していきます。
たとえば、「人と仲良くしたいけど怖い」と感じる子がいるとします。
ACTでは、その「怖い気持ち」を否定するのではなく、「今は怖い気持ちがあるんだね」と認めることから始めます。
そして、怖さを抱えたままで、「仲良くなりたい」という気持ちも大事にしながら、少しずつ行動に移していきます。
たとえば、「こんにちは」とあいさつをしてみる、相手の話に耳を傾けてみる、そんな小さな一歩を踏み出すことで、勇気を持ちながらもその怖さを少しずつ和らげることができるのです。
このように、ACTでは「感情を無理に消そうとする」のではなく、感情と一緒に歩んでいくという考え方を大切にしています。
子どもたちが、自分の気持ちを大切にしながら、やりたいこと・大事にしたいことを見つけていけるよう、これからもそっと背中を押していきたいなと思います。
(平石)
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